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ターンテーブル原理主義

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ターンテーブルでの作業「解体」


よくわからない作業名をつけた方が自分のバカを隠せると思って「解体」などという名前をつけているという側面も確かにありますが、これは要するに、 ・ある曲をその1曲に含まれている構成要素以外は使わずにまったく違う曲に作り替える という、ある意味で誰でもやっている作業をサンプリングとターンテーブルによって行うという、ただそれだけのことです。特にターンテーブルが重要な位置を占めます。

いわゆるリミックスとは違い、どこまで異質なもの(そして、自分が気に入るもの)に変えられるかというところにその主旨はあります。また、複数の曲を使わ ずに、1曲だけを使用する、というのも大きなポイントです。つまり、「1曲から別の1曲を作る」ということになります。 こんなことの何が面白いのかというと、これは音楽というものの構成要素を考えるとよく分かるのですが、 ・音楽(曲)というものは頭から終わりまですべて同じ要素で構成されているわけではない という大きな事実があります。

何気なく聴いている音楽も、その断片は限りなく多彩で、それをこまかく切って考えると、たかが一曲のくだらない曲でもとてつもない可能性を秘めていること がわかります。どんな曲でも本当に構成要素というのは多彩で、仮に完全に同じ要素で構成されている音楽があるとすれば、それは単音だけが最後まで続く曲 で、つまりひとつの音が「プー」と鳴り続けているだけの音楽です。

広い世界にこういう曲がないとは断言できませんが、よほどの前衛音楽以外では普通ありません。

つまり、普通の楽曲というのは、それなりに様々な要素から構成されているわけで、それを崩していって再構築するのが「解体」作業なわけです。 また、曲にもよりますが、ロックにしろHIP HOPにしろクラシックにしろ、普通の音楽は様々な楽器で構成されているのが普通で、特にポピュラー音楽に関しては、

・人の声(男声、女声、コーラス、語りなど)
・弦楽器(ギター、ストリングスなど)
・打楽器(ドラム、パーカッション、クラップなど)
・管楽器(サックス、トランペット、クラリネットなど)

というように様々な声や楽器から構成されていて、これが単体の場合もあるし、またはドラム+ベースとかピアノ+ギターとか複合された音が鳴っているわけで(普通だとこちらですが)、その断片を切り取って再構築するわけです。 これらはサンプリングなどでおこなっても面白いものでしたし、それまでも趣味としてやっていました。しかし、ある日すべての事情は変わりました。

つまり、私はターンテーブルを手に入れたのです。

友人の部屋で捨てられてそうになっていたものでした。
これにより、事情は劇的に変わりました。何がかというと、ターンテーブルで加えることのできる音の効果というのは、サンプリング+エフェクターなどに比べて、格段に幅の広いものがあるのです。しかも、それを人為的に即座におこなうことができるというのも特徴です。 例えば、

「女声の声を低い男声めいた声にしたい」

と思ったとします。
これはエフェクターでいえば、ピッチシフトなどがそれに当たり、確かにテンポを変えずに音程だけを低くすることができますが、音質は劇的に悪くなります。
ところが、ターンテーブルの場合だと、テーブルの脇を摩擦して、回転数を遅くするだけで、この効果が即座に、しかも音質を損なわずにできるわけです(テンポは当然変わります)。

さらに例えば、

「あるフレーズを繰り返しループさせたい」

と思ったとします。これはサンプリングでは実に単純で、サンプリングしてループさせておけばいいだけですが、
しかし、ここで、

「ループの途中で音の一部分をリバースさせたい」

などと思いついた時に、サンプリングマシンでもちろんできないわけではないのですが、リサンプルしたり何なりと面倒くさいことになる上に、即座にこれをおこなうことができません。
しかし、ターンテーブルなら、ループ(長さに限界はありますが)も、しかもループしている途中でリバースだろうが、カットだろうが、何だって即座に自分の手でおこなえてしまうわけです。

「Fuck you,bitch」という人声をループさせると(言葉の例えの悪さは無視して下さい)、サンプリングでは延々と「Fuck you,bitch…Fuck you,bitch…Fuck you,bitch…」と繰り返されるだけですが(基本的にはです)、ターンテーブルでなら、こういう無機的な効果だけではく「ファ、ファ、ファ、ファッ、キュ、キュ、キュ、キュー、キュワキュワ(スクラッチです)、ビビビビビビーッチ」(この表記では全然わかんないでしょうが)と実に変化に富んだ効果を即座に与えることができるわけです。

これは私にとって驚きでした。
サンプリングマシンがデジタル技術の生んだ最高峰の再生器械だとすると、ターンテーブルは確実に「楽器」だと思うわけなんです。自分の手で音を抽出して加工するという作業を即興で次々とおこなっていける、という快感があります。

そんな中で、私は勝手に「ターンテーブリスト宣言」をしたわけですが、しかし、普通、ターンテーブリストというのは、DJ DISKやROB SWIFTなどのように、あくまでDJとして成立している人の中でターンテーブルを操る人のことを指すわけで、DJではない私がターンテーブリストと自称することには問題があります。

そこで、私は「インチキ・ターンテーブリスト」という呼称にとどめています。どうしてインチキかというのは、別ページの私のセッティングやスクラッチの仕方を読んでもらえればわかると思います。多くのターンテーブリストDJの方には文句のある方もいるとは思いますが、しかし、やり方はどうであれ、ターンテーブルは素晴らしい楽器だと思い続けている私でもあるので、自称でターンテーブリストと呼ぶことをお許し下さい。

まあ、異端ということで。